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『嘘デレ!』レビュー ~新ジャンルという名の原点回帰~

【テンプレ】
「ユリイス名義」は、台鼎がオフラインで寄稿した文章の再掲や、常体でドヤ顔レビューしたいときに使う用のカテゴリです。
ドヤ顔で語ってますが情報にほぼソースや例がありません。脳内設定の恐れすら。
また、オタク全般に関する批評・レビューを専門にした本向けの原稿なので、エロゲレビューらしからぬ表現があったりします。

数年ほど前の原稿も含まれるので、色々変なことを言ってる可能性はありますがご了承ください。


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 『嘘デレ!』は、アダルトゲームブランド「脳内彼女」から二〇〇九年末に発売された十八禁恋愛アドベンチャーである。

 ツンデレ、ヤンデレ、クーデレ……。○○デレという表現は、キャラクターの属性を表現するのに使われる言葉だ。ツンとしながら、病みながら、あるいはクールでありながらデレてくれるキャラクターが、これらの言葉を用いて形容される。
 ではこの聞きなれない表題の「嘘デレ」という言葉も、同様にキャラクターを形容する新しい言葉――いわゆる新ジャンルというべきものなのだろう。しかし嘘とデレを組み合わせたところで、今ひとつどんなキャラクターなのかはピンと来ない。
 ということで、このゲームのあらすじを紹介したい。


 資産家・在原家の当主であった祖父が死に、その遺産の相続人に指名された主人公。天涯孤独となってしまった病弱な従妹・一純と共に暮らすため、彼は一純の通う名門女子学園へと編入されることとなる。そこで彼は、幼少の頃に別れたきりの幼馴染・美優と再会した。
 そして程なくして、大人しく健気な従妹と快活な幼馴染との間で主人公の争奪戦が始まる。しかし、エスカレートしていく騒ぎの中で見えてきたその真実の姿は、祖父の遺産を継げなかったことに恨みを持つ守銭奴の従妹と没落してしまった家の復興のため玉の輿を狙う狡猾な幼馴染の、主人公の持つ「在原家の地位と財産」の奪い合いであった。
 部活予算や家の諍いも絡んでエスカレートしていく争いの中、ドンドンとはがれていく彼女らのメッキ。自分自身に見向きもされていなかった事実を知った主人公は、彼女らとの関係を改善しようと奮闘するのだった。


 つまり嘘デレとは、序盤において「デレているのが嘘」だという意味に加え、時間の経過で「嘘をついているのが本当の意味のデレに変わる」という意味を持ったダブルミーニングなのである。
 最近の美少女ゲーム……特に恋愛モノが、無意味に主人公がモテモテな作品が多いのに対して、「デレているのが嘘」という設定は斬新だ。しかもヒロイン達からの主人公そのものへの評価は「今すぐにでも崖から飛び降りてくれると嬉しいんですけど。もちろん遺書付きで」だとか「お金がとれない貴方に興味はないから」だとか言われてしまうような散々なもので、好感度は0どころかマイナスである。実際に、デレからのその落差が売りであるようで、OPムービーが「真実」というフレーズを強調し雰囲気は普通の萌えゲーと変わらない嘘バージョンと、「金づるゲット!」などとヒロイン達の裏が曝け出されている本音バージョンの二つが用意されるほどの力の入れようだ。
 そして、この好感度最低の状況から主人公がどのように彼女らを惹きつけていくのか、というところがこの先の展開であり、プレイヤーがワクワクするところである。
 しかし、である。この点に関して考えてみると、この形は旧来の恋愛シミュレーションに通じるものがあると分かる。最近の恋愛モノは、元から好感度の高いヒロインとのイベントを起こすフラグを立てにいく、というものが多い印象を受ける。しかし、『同級生』に端を発するような元来の恋愛モノは、ヒロインの好感度を上げて文字通り「攻略」するというプロセスを楽しむものだった。形式こそ違えど、この『嘘デレ!』の「好感度を上げてヒロインを振り向かせる」という楽しみ方は、それと全く同じではなかろうか。
 確かにヒロインの人間性を掘り下げるような深いシナリオに向いているのは、攻略のプロセスを省くことの出来る点で前者であり、後者は時代遅れだという声もあるかもしれない。しかし、その中にあってこの『嘘デレ!』のシナリオが魅力的に映るということは、プレイヤーの中にはまだ「ヒロインを攻略する」ということに楽しみを感じるということだ。同時期に『ときめきメモリアル4』という作品が出たのも、決して単なる懐古などではなく、我々の中にある一つのニーズに応えたものであるはずなのである。この作品はそのことを思い出させてくれた。
 「デレているのが嘘」という新しい概念による落差を強調しながら、その彼女らを攻略する楽しみを引き出すという恋愛モノとしての原点回帰をなしていること。それがこの作品の最大の特徴であり魅力なのだ。

 ただ、問題があった。この脳内彼女というブランドは、受けシチュ……つまり「女の子に襲われるシチュエーション」に特化しているメーカーなのである。その作風はもちろん今回にも受け継がれている。
 したがって主人公は基本的にヘタレであり、それはヒロインを攻略する際にも、ヒロインの誘惑に押し負けるという形で発露している。それは「主人公がいいところを見せてヒロインの好感度を上げる」という先に考えた展開とは逆を行くもの。ヒロイン達が本当の意味でデレていくという展開はもちろんあるのだが、何故デレていくのかが分からないまま話が進んでしまうので、結局ほかのゲームと大差なくなってしまった。この魅力的なシナリオは、これを作り上げた会社の作風とはひどく相性の悪いものだったのである。
 先に出したような「嘘デレ」にはあてはまらない個性的な(クーデレメイド、男の娘、ダンボールヒロインなどの)ヒロインのシナリオによってまた違う評価も出来るのだが、それではこの作品のコンセプト的に首をひねらざるを得ない。

 非常に面白いコンセプトでひょっとすれば美少女ゲーム業界に影響を与えうるような作品になるかもしれなかったのだが、生み出されたメーカーが悪かったと自分は評価したい。しかし、このブランドの作品としては、「受けシチュや男の娘といった個性的なブランド色を残しながらもシナリオもまあまあ良いものを作った」と思えてしまい、実際それらの特色については非常に楽しめるものであったところが、無碍に酷評出来ない難しいところである。

(初出:2010年4月)
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ユリイス名義(レビュー、エッセー風味) | 【2012-03-19(Mon) 08:36:52】 | Comments(-) | [編集]

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